外科で起こったこと -30-
2019.09.23.11:46
第三十話 裸衣
「先生、そろそろあがろうか?」湯船に浸かる たかこ を正面から抱きしめて、お尻や背中にいやらしい手を這わせる学生が提案して来ます。ふと見るとベッドルームは煌々と光っております。恐らくは浴室へ移動する際に学生が照明の強度を最大にしておいたと思われました。
「先に行ってちょうだい」、このまま学生に従って手を引かれて行ってしまえば、一糸まとわぬ全裸で明るい光に晒されてしまいます。学生を先に行かせて、後から何かをまとって部屋へ戻ろうと思った たかこ です。でもそれも大きな過ちでありました。
「じゃあ、待ってるね!」学生が素直に従い出て行ったところで、たかこ は浴室の電気を消し、扉を開いて手を伸ばしバスタオルを手にします。両脇の下、胸が隠れるように身体を覆ってベッドルームの方へと向かいます。
「先生!、こんなの見つけちゃった!」、学生が手にしているのはクリーニングに出すつもりで持ち帰った白衣です。日常の診療で使用する白衣、医局員たちは定期的に所定のカゴに入れておくと教室でクリーニングに出してくれて各人の机に戻って来ます。ところがある時、たかこ の白衣が別の先生のところへ行ってしまって、あとからそれが判明したことがありました。潔癖な たかこ は、別の先生方、とくに男性の多い医局ですので、一緒のカゴに入れてクリーニングに出すのは嫌な気になり、自分で行きつけのクリーニング屋にお願いするようにしておりました。
「あっ、それはクリーニングに出そうと思って持ってきたのよ」との たかこ の返事、「ねえ、先生、これ着てみてよ!」、学生のわくわくするような、純粋そうにも見える瞳です。「先生が病院で見せる清楚な姿を見たいんだよね。ほら、うちの学年の憧れの的だし」って たかこ の心をくすぐる発言です。
「ダメよ、こんなところで」と否定する たかこ に近寄り、後ろから白衣をはおって着ます。「ほら腕を通して!」、たかこ の手を取り白衣に腕を通す学生、確かに、明るい部屋の中、バスタオルを巻きつけるだけで身体を覆う不安定な体勢に上から白衣を着させられればそれに従う たかこ です。
たかこ に白衣を着せて前のボタンを留めたところで、学生、「これはもういらないね」と白衣の下から中のバスタオルを剥ぎ取ります。「あっ!」、小さな声をあげる たかこ ですが、全裸に白衣をまとった姿の たかこ をジロジロと見つめて、「とっても素敵だ!、病院にいる浅○先生とまったく同じだよ!」、はしゃぎ回る学生、とりあえず裸体を白衣でしっかり覆った状態に少し落ち着いた たかこ はベッドに腰を降ろしました。「ああ、魅力的だ、先生、尊敬するよ」と学生、「そんなぁ」否定する たかこ ですが、褒められる心地よさはありました。
この後、とんでもないことになることなど知る由もない たかこ でした。