外科で起こったこと -35-
2019.11.23.09:44
第三十五話 想父
両手を縛られ拘束された たかこ の足首を掴んで脚を広げようとする学生、それに抗う たかこ 「いいじゃん!、ただの遊びだよ!」との学生の囁きに たかこ、「ダメよ!、絶対にダメ、お願い、後生よ!」。これはもう、ベッドを共にした恋人同士でも、もちろん、大学病院外科勤務の女医とその下についた臨床実習の学生の関係でもない、加虐者と被虐者の関係、あるいはサディストとマゾヒストのからみのようでありました。でも、思えばこの夜の二人は常にそんな関係、ベッドでの愛撫に始まり、激しい挿入、お風呂での肛門への責めは、愛し合うとはほど遠い、言うなれば学生による たかこ の身体のもて遊びのようなものでした。
ああ!!、学生の腕力に負けて、脚を広げられそう!、性器を明るいところで露出されそう!、いよいよ追い込まれる たかこ でした。
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たかこ は小さい頃から亡き父になついておりました。たぶん父から叱られたことは一度もない、父はとても優しく たかこ を大切にしてくれて、たかこ はそんな父を怒らせることはしないよう良い子を務めました。
そんな父の教え、世の中に努力しないでも優秀な天才なんていないんだよ。みんなできる人は努力もするし勤勉なんだ。でもそれを表に見せるか陰でやるかは人によるよね。頑張っているところを見せてそれなりに優秀であるより、陰で努力して人知れず優れている方が格好いいよね!? そんな言葉が心に残っております。
高校2年の時に心臓の病気で父は他界しました。たかこ にとってはこの上ない悲しい出来事でありました。それまで都内の進学校で優秀な成績であった たかこ ですが、とても勉強など手に付かない状況に陥りました。本来は、東大か千葉大、あるいは医科歯科の医学部に行くつもりでありましたが、ここで大きく成績を落としてしまい、それでも家の経済事情も考慮して現役で大学進学を目論み地方の国立大学へと進みました。
大学を卒業して都内の大学の外科の教室に入局して、それまでも、その後も、父の言葉を常に心に留めて研鑽を積みました。すなわち、頑張っているところを表に出さない、陰の努力で優秀な人間であること、そして、その優秀さをひけらかしたり、鼻にかけて自慢するような態度は絶対しない、分かる人は分かる人知れずできる、そんな人間を目指しました。そのことは、女医として、女としての我儘や、特有の自己主張をも たかこ から無くしました。常に控えめで目立たぬ存在、笑顔で優しく、それでいて実は中身のある優秀な才女才媛を演じました。これは亡き父が理想とする女医なんだろうと信じて、天国の父に今の自分を見てもらいたいそんな気持ちでもありました。
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学生との格闘で たかこ が着ている白衣の裾がまくれてしまい、性器の前面のヘアが少し露出してきて、それをすごく気にしながら、いよいよ たかこ は追いつめられます。悪夢はもうすぐそこまで来ているのでありました。