外科で起こったこと -13-

2019.03.09.15:14

第十三話 深交

 先週の医局の話に戻ります。学生が担当する肝門部胆管癌の患者は金曜日に手術予定でありましたが、水曜の採血で検査データの悪化が見られ、具体的には黄疸の指標である総ビリルビンが再上昇して3.0となっておりました。すぐ胆管チューブからの胆道造影を行なったところ、チューブが抜けかかり、やや詰まりかけておりました。すぐにガイドワイヤーを使ってチューブを入れ替え再固定、すべて たかこ と学生の二人でやりました。
 外科医としてドレーン管理に失敗し、たかこ は反省しきり、学生はなんだかわからずキョトンとしておりましたが、幸いなことに来週の火曜日は たかこ の所属する肝胆グループは手術予定がありませんでした。今回の症例は右葉切除ですので完全に減黄(黄疸を改善すること)してから手術に臨みたいところです。手術室に空きの確認をしたところでオーベン(グループのトップ)の元へ、胆管チューブの管理が悪かったことをひらに謝罪して手術の延期を申し出ました。オーベンの佐○木先生は快く了承していただき、「まあ、キミのせいではないよ。延期で時間ができたぶん、しっかり担当の学生に指導してくれたまえ」とのことでした。

 金曜日、朝から学生は他のグループの手術を見に行きました。上部グループの胃癌、下部グループの直腸癌を交互に見て昼過ぎには病棟のカンファレンスルームに戻って来て、たかこ のピッチを鳴らします、「今上がりました」と。午後は肝門部胆管癌手術の勉強です。
 患者は73歳女性、160 cm、58 kg、右肝管に主座を置く肝門部胆管癌で、左右肝管分岐部から1cmの左肝管で切離すれば腫瘍から1.5cmの断端マージンを確保でき、肝右葉切除、肝外胆管切除をすることで完全に腫瘍を切除できます。一番の問題は肝臓の6割を占める右葉を切除した後の残肝の機能です。とりわけ閉塞性黄疸で肝機能障害があった肝臓ですので、肝不全の危険はあります。インドシアニン・グリーン(ICG)15分停滞率は7%と正常で、チューブトラブルが起こる前の段階での胆道ドレナージからの減黄曲線と減黄率B値(清水のB値)は良好で、肝予備能は申し分ないことが判りました。
 続いて、学生にCT volumetoryの指導です。患者の1cm刻みの肝臓のCTをコンピュータに取り込んで、各スライスの肝の面積(cm^2)を計測し、合計すれば肝臓の体積(cm^3)となります。続いて、中肝静脈の右側端を切離線と定めて肝右葉切除後の残肝部分の体積を同じ方法で計測します。160 cm、58 kgは体表面積1.6 m^2となります。標準肝容量は、体表面積 x 706.2 + 2.4ですので、この患者は1132.3 cm^3です。これに対してCT volumetoryによる計測では、全肝は1152.5 cm^3で標準肝容量とほぼ同程度、残肝は510.5 cm^3となり、これは標準肝容量の45.1%、全肝容量の44.3%に相当し、残肝としては十分なボリュームであることが明らかとなりました。
 これらのことを全て学生にレクチャーし理解させ、月曜朝の総回診、午後の術前カンファレンスで見事にプレゼンテーションさせれば たかこ の役割はほぼ終了です。学生への指導は、休憩と出前の夕食をはさんで、午後から夜の9時までかかりました。教授他、スタッフの学生への評価はそのまま たかこ への評価となりますので、ちょっと難しい分野ではありますが、指導に熱が入る たかこ でありました。それだけ深い交流を持ってしまったのも一つの過ちでありました。


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 はじめまして。たかこと言います。都内の女子校から某国立大学医学部を経て、現在は女医として5年目、小児科を専行して日々研鑽を積んでおりますが、、、

 私には、誰にも知られてはならない、でも誰かに言いたい、秘密があります。それは、私自身の性の問題です。このブログの中だけでこっそりと匿名で綴って参ります。



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